「熱を出したらどうしますか?」と聞かれて、私は何社も落ちました
面接で、子どもの年齢を聞かれました。
答えると、こう言われます。
「小さいね」
そして、必ず続けて聞かれます。
「熱を出したりしたときは、どうする予定ですか?」
近くに親戚はいません。私は正直に答えました。
「休むことになるか、病児保育に預けると思います」
不採用でした。
何社も、同じ流れでした。
これは、あのときの私たちが読みたかった記事です。
全部読む時間がない人へ(先に結論だけ)
- 扶養内パート・土日祝休み希望——そんな求人は、ほとんどありませんでした
- 面接で必ず聞かれたのは、 「子どもが熱を出したらどうするか」。正直に答えて、何社も落ちました
- 子どもの発熱は 週1回、月1回は当たり前。兄弟で繰り返すので、終わりません
- 保育園に預けるには 働いている必要があり、働くには 保育園が必要でした
- ただし 求職活動中でも、保育の必要性の認定対象になります(当時の私は知りませんでした)
- 私たちが選んだのは、 収入を増やすことではなく、固定費を下げることでした
「働きたいのに働けない」は、母親みんなの話
先に、はっきり書いておきます。
これは 国際結婚家庭に限った話ではありません。日本中の、たぶん世界中のお母さんが同じことで悩んでいます。
ただ、私たちの場合はここに 「近くに頼れる親戚がいない」 が重なりました。夫の家族はアメリカ。私の実家も遠い。そして、あの時期は コロナ禍でした。
誰にも助けを求められない状態で、子どもが熱を出す。それが、私たちのスタート地点でした。
専業主婦だった2年間を支えたのは、あの部屋でした
第一子を出産して、夫の扶養に入ったまま第二子を妊娠、出産。その間、私は完全に専業主婦でした。 夫の給料だけで生活しなければいけなかったんです。
このとき、心から実感したことがあります。
あのとき、家賃が半額の部屋を選んでいて、本当によかった。
もし家計に見合わない家賃の住居を選んでいたら、私はすぐに働かなければいけない状況に陥っていたはずです。子どもが小さくて働けない時期に、それは詰みます。
(その部屋を選んだ話は こちら に書きました)
そして、もうひとつ気づいたことがあります。
私たちが賃貸で断られたときの基準——「家賃の4倍の月収」。あのときは理不尽な壁に見えました。
でも、あれは的を射ていたんです。 私たちは、あの部屋に住むのがちょうど見合っている収入だった。基準のほうが正しかったんです。
保育園と就労の、堂々巡り
さて、いざ働こうとして分かったことがあります。
保育園に子どもを預けるには、働いている必要がある。でも、働くには保育園が必要。
前作で書いた、賃貸の堂々巡りと同じ構造でした。
ただ——これは当時の私が知らなかったことですが、 求職活動中であっても、保育の必要性の認定対象になります。
また、保育の必要性が認められる 就労時間の下限は、月48〜64時間の範囲で市町村が定めることになっています。つまり 自治体によって基準が違うので、自分の住む市区町村の要件を確認するのが第一歩です。
(※2026年8月時点の制度です。認定基準は自治体によって異なります。必ずお住まいの市区町村の最新情報をご確認ください)
「扶養内・土日祝休み」という求人は、ほぼない
働き方の希望は、はっきりしていました。 扶養の範囲内で、土日祝は休みたい。子どもが小さいうちは、家族の時間を確保したかったからです。
そんな求人は、ほとんどありませんでした。 土曜出勤は必須、というところばかりです。
ようやく応募できても、冒頭の面接が待っています。「小さいね」「熱を出したらどうしますか」——そして、不採用。
企業側の気持ちも、今なら分かります。人が足りないのに、突然休まれたら困る。責める気持ちはありません。
でも、あのときは何社も落ちました。
決め手になったのは、制度ではなく職場の空気でした
ようやく見つけた扶養内のパートで、働き始めました。
子どもの発熱は、想像どおりでした。 週に1回くらい。月に1回は、ほぼ必ず。長男と次男で繰り返されるので、終わりがありません。
さらに、 夫まで一緒に熱を出すことがありました。本当にカオスでした。
出勤して、すぐにこども園から電話がかかってきたこともあります。
そのとき、職場の方はこう言ってくれました。
「すぐに迎えに行ってあげて」
私の職場は、同じくらいの年齢の子どもを持つパートさんばかりでした。だから、優しい雰囲気だったんです。
ここが、いちばん大事なところだと思います。
もし職場の雰囲気がそうじゃなかったら、それが辞めるきっかけになっていました。
制度がどれだけ整っていても、働き続けられるかどうかを決めるのは、 職場の空気だったりします。これは制度の資料には書いていないことです。
ちなみに、私が鬼になった日
夫が熱を出していて、子どもも熱を出していた日のこと。
私は 夫と子どもを家に残して、仕事に行きました。
夫はしんどそうにしていました。でも、私はこう言い放ちました。
「 女性はずっとそうやって、自分が熱を出しても子どもと一緒にいなきゃいけないのよ! 」
……鬼でした。
でも、あのときの私には必要な鬼だったと思っています。
壁の話:働くほど、手取りが減る
パートでも、続けていると仕事の内容も責任も重くなってきます。そうなると、当然こう思います。
それならもっとちゃんと働いて、しっかり給料が欲しい。
でも、そこで出てくるのが「年収の壁」でした。
中途半端に収入が上がると、扶養から外れます。扶養を外れると、社会保険料や税金を自分で払うことになり、結果として 働く時間を増やしたのに手取りが減る。
この負のサイクルが、ブレーキになりました。
ただ、 ここは今、大きく動いています。
- 106万円の壁:2025年の年金制度改正法により、賃金要件(月額8.8万円)は 2025年6月から3年以内に撤廃される予定。企業規模要件も段階的に縮小・撤廃へ
- 130万円の壁:人手不足などで一時的に130万円以上になった場合、事業主の証明があれば 原則として連続2回まで、引き続き扶養に入り続けることが可能
つまり、私が悩んだ壁は、これから形を変えていきます。今から働き方を考える人は、 昔の常識で判断しないほうがいいです。
(※2026年8月時点。制度は改正が続いているため、必ず厚生労働省などの最新情報をご確認ください)
私たちが選んだのは、収入を増やすことではなかった
ここが、わが家の考え方の中心です。
私たちは、 収入を最大化する働き方を選びませんでした。家族と一緒に過ごす時間を優先したからです。
だからこそ、 固定費を下げる必要がありました。
家賃の安い部屋を選んだのも、家を購入していないのも、その選択とセットです。 収入を増やさない代わりに、出ていくお金を減らす。この計算の上に、私たちの暮らしは成り立っています。
どちらが正しいという話ではありません。 収入を増やす道を選ぶ人もいるし、そうしないと生活できない家庭もあります。私たちは、たまたまこちらを選んだというだけです。
夫が家事をするようになった、本当の理由
夫は、家事も育児もよくやってくれます。
でも、これを「夫が優しいから」というきれいな言葉で片付けたくありません。
私たちには、 近くに頼れる家族がいませんでした。そしてコロナ禍で、他人との関わりも制限されていました。
夫婦二人でやっていくしかなかった。 その状況から、少しずつ築き上げてきた形です。夫がもともとアメリカ人だからかもしれないし、両方の親から離れて始めた結婚生活だったからかもしれません。
もうひとつ、私には理由がありました。
私は年上です。 普通に考えたら、私のほうが先に死にます。だから、私がいなくなっても 夫が日本で生きていける力をつけてほしかった。自分でできることは、自分でできるように。
夫はたぶん、そんな風には思っていません。 鬼嫁だと思っているかもしれません。
アメリカの家族からは「働かないの?」
「妻が扶養に入る」という日本の仕組みを、夫は面白がっていました。
会社から扶養手当が出て、社会保険料も負担してもらえる。 「それもいいな」 と思っていたようです。
一方で、 アメリカの家族からは「仕事しないの?」と言われました。アメリカでは共働きが普通ですから、当然の反応だと思います。
夫自身は、こう言っていました。
「好きにしたらいいよ」
……そんなかっこいいことを言える給料ではなかったのですが。
いま、同じ状況にいる人へ
最近、私は 扶養を抜けました。子どもたちが大きくなり、移住して、状況が変わったからです。
あのとき「扶養から外れないことが最善」だった計算は、 永遠の正解ではありませんでした。状況は、変わります。
そのうえで、今まさに「働きたいのに働けない」と悩んでいる方に伝えたいことは、2つです。
ひとつ。まず、固定費を下げることから考えてみてください。
無理に働いても、子どもが学校に行けなくなれば、辞めざるを得なくなります。収入を増やすより先に、 出ていくお金を減らすほうが、確実にコントロールできます。
ふたつ。でも、働かなくちゃいけない状況なら、働いてください。
働くことがあなたにとってストレス発散になるなら、なおさらです。 病児保育をはじめ、使えるサービスはどんどん使ってください。
家で家族だけで過ごしていると、外からの刺激を受けないので、自分たちだけの世界になってしまいます。 社会とつながることで、リフレッシュできる。それは、私自身が実感したことです。
本当にケースバイケースです。だから、正解はひとつではありません。
あなたの選択は、正しかったよ
面接に落ち続けていた、あのときの自分に言うとしたら。
伝えたい言葉は、ひとつだけです。
あなたの選択は、正しかったよ。
追伸:このシリーズは、来日したばかりの国際結婚家族がぶつかる壁について書いています。第1弾の「家が借りられない話」は こちら です。
※制度は2026年8月時点のものです。保育の認定基準は自治体によって異なり、年収の壁に関する制度は改正が続いています。必ず最新の公式情報をご確認ください。
これは私たちの個人的な体験談であり、金融・税務・労務のアドバイスではありません。
参考(公式情報)