3軒内見して、2軒断られた。私たちが選んだのは、告知事項ありの部屋でした
3軒目の部屋で、私は案内してくれた方に聞きました。
「洗濯機は、どこに置くんですか?」
その方は、部屋をぐるりと見回してから、こう答えました。
「どこに置くんでしょうかね」
洗濯機置場が、なかったんです。
隣で夫が言いました。
「楽しそう!」
さすがアメリカン、と私は笑いました。そして、その部屋を契約しました。
これは、あのときの私たちが読みたかった記事です。
全部読む時間がない人へ(先に結論だけ)
- 3軒内見して、 2軒は断られました。理由は「収入が足りない」。求められたのは 家賃の4倍の収入
- さらに、 保証会社も使えないと言われました。断られる理由は、 2段構えになっていました
- 「奥さんが就職して、奥さん名義で借りればいい」と言われました。 私は妊娠中で、コロナ禍でした
- 最後に契約したのは、 家賃が半額の、告知事項ありの部屋。数年間、誰も住んでいませんでした
- でもこれは、 私が選びました。固定費を下げたかったからです
- 私たちが回ったのは、 公的な賃貸住宅。保証人はいらない代わりに、収入基準が厳しい世界でした
断られた理由は、2段構えだった
当時、夫はまだ配偶者ビザを持っていませんでした。転職前の就労ビザのままです。会社を辞めたあと、入管への届出をして、ハローワークに通っていました。
(就労ビザの方が退職・転職したときは、 14日以内に出入国在留管理庁へ届出が必要です。また、正当な理由なくその活動を3か月以上行っていない場合、在留資格の取消し対象になり得ます。求職活動をしているなら、その実態が大切です。※2026年8月時点)
私たちが回ったのは、 公的な賃貸住宅でした。1日で3軒、内見しました。そして2軒、断られました。
理由は「収入が足りない」。求められた基準は、 家賃の4倍の収入でした。
さらに、こう言われました。 保証会社も使えません、と。
つまり、こうです。収入基準で弾かれる。そこを保証会社でカバーしようとしても、その保証会社が使えない。 断られる理由が、2段構えになっていたんです。
(あとで知ったことですが、民間賃貸の一般的な目安は「月収が家賃の3倍」「年収が家賃の36倍」あたり。公的賃貸は保証人がいらない代わりに、 収入基準は4倍と厳しめです。私たちが直面したのは、この「4倍の壁」でした)
来日したての人が、必ずぶつかる壁
もうひとつ、当時の私が知らなかったことがあります。
公的賃貸には、連帯保証人を立てる方法もあります。ただし——調べてみると、こう明記されていました。
連帯保証人になれる外国籍の方は、永住者または特別永住者に限られる。
つまり、就労ビザや配偶者ビザで来日したばかりの人は、 そもそも連帯保証人になれないんです。連帯保証人には、年間所得240万円以上といった条件も付きます。
来日したての外国人にとって、これは構造的にきつい話です。 永住者になるには、まず日本で長く暮らす必要がある。でも暮らすには、家がいる。家を借りるには、保証が要る。
だから残る道は、保証会社の審査に通ることでした。私たちの場合は、そこで「使えません」と言われました。 審査の基準は公開されていないので、理由までは分かりません。
(※ここで書いているのは、私たちが利用した公的賃貸の規定です。制度は運営主体によって異なり、変更されることもあります。必ず最新の公式情報をご確認ください)
「奥さん名義で借りればいいじゃないですか」
そのとき、不動産会社の方に言われました。
「奥さんが就職して、奥さん名義で借りたらいいじゃないですか」
善意のアドバイスだったと思います。実際、それが一番わかりやすい解決策です。
でも、そのとき私は 長男を妊娠していました。
そして、 コロナ禍でした。
妊娠を隠して就職活動をすることは、私にはできませんでした。
いちばん現実的に見えるアドバイスが、目の前で詰んでいく。あのときの感覚は、今でも覚えています。
3軒目:家賃半額、告知事項あり、数年空室
3軒目は、最初から分かっていました。 ネットの物件情報に、告知事項があると書かれていたんです。家賃は、周辺の相場の半分。数年間、誰も住んでいない部屋でした。
私たちは、それを見て話し合いました。
夫は言いました。
「クリスチャンには、おばけはいないよ」
またジョークで返してくる。でも、私も同じ意見でした。
正直に書きます。 この部屋を選んだのは、私です。
理由は2つありました。
ひとつは、 固定費を下げたかったから。今すぐ住みたい場所に住めないのなら、いっそ徹底的に家賃の低いところに住めばいい。固定費を下げれば、その分、暮らしは豊かになるはずだと思いました。
もうひとつは、 最初から良い家に住んでしまうと、あとで生活水準を下げるのが大変になると思ったから。この先、何かで困窮する状況が来たとき、下げしろがない生活は苦しい。だったら、下から始めたほうがいい。
(それに、これからの日本の人口動態を考えたら、こういう物件はきっと増えていきます。安くなるなら、私は気にしません。ここは、自分でもちょっとクレイジーな面だと分かっています)
洗濯機は、玄関に置きました
契約したものの、洗濯機置場はありません。
近所のホームセンターに行ってみたら—— 洗濯パンが売っていました。
家の近くには、その家に必要なものが売っている。当たり前かもしれませんが、私はこのとき初めて実感しました。
私たちはその洗濯パンを買って、 玄関に置きました。その上に洗濯機を置いて、暮らしました。
問題は、だいたい解決できます。想定していたのとは、ちょっと違う形で。
今なら分かる、使えたかもしれない道
当時の私たちは、選択肢をほとんど知らないまま探していました。今なら、こう調べます。
① 公的賃貸という選択肢
UR賃貸住宅は、 礼金・仲介手数料・更新料・保証人が、すべて不要です。保証会社も要りません。
外国籍の方の申込資格は、永住者・特別永住者・ 中長期在留者(在留カードをお持ちの方)。契約内容を十分に理解できることが条件です。必要書類は、在留カードまたは特別永住者証明書の写し。
ただし 収入基準は、月収が家賃の4倍以上(単身の場合)。ここは民間より厳しめです。 保証人がいらない代わりに、収入で見られる、という構造です。
私たちが回った3軒は、いずれも公的な賃貸住宅でした。だから2軒で言われた「家賃の4倍」も、この基準です。そして最終的に契約できた3軒目も、同じ公的賃貸。 保証人を用意できなくても、家賃の低い部屋を選べば、収入基準はクリアできた——結果的に、私たちはそこに辿り着いていました。
② 「断られる」のは、国も把握している
国土交通省は、 外国人の民間賃貸住宅への円滑な入居についてという専用のページを作り、大家さん・不動産事業者向けのガイドまで公開しています。
住宅セーフティネット制度では、外国人は 住宅確保要配慮者として位置づけられています。そして、 外国人であることのみを理由とした入居拒否は、不当な差別に当たり得るとされています。
つまり、これはあなただけに起きていることではありません。国が課題として認識し、仕組みを作ろうとしている領域です。
③ 自治体の相談窓口
多くの自治体に、外国人住民向けの相談窓口があります。住まいについての相談を受け付けているところも少なくありません。ひとりで不動産会社を回る前に、一度聞いてみる価値はあります。
(※制度の内容は2026年8月時点のものです。収入基準や申込資格は変わることがあるため、必ず各機関の最新の公式情報をご確認ください)
私たちは、その部屋から始めました
玄関に洗濯機のある家で、私たちは暮らし始めました。
そこで長男が生まれました。固定費を下げたぶん、貯金ができました。そして数年後、私たちは大阪を出て、地方へ移住しました。(その話は こちら に書きました)
あのとき、確かに2軒断られました。理由も理不尽に感じました。
でも3軒目は、断られた部屋ではなく、 私たちが選んだ部屋でした。
もし今、家が借りられなくて困っている方がいたら——伝えたいのは、ひとつだけです。
選択肢は、思っているより多いです。そして、理想と違う部屋から始めても、暮らしはちゃんと続いていきます。
追伸:このあと夫は、日本の銀行口座を開けるまでにもうひと苦労しました。その話は こちら に書いています。
※制度・基準は2026年8月時点のものです。最新情報は国土交通省・UR都市機構・各自治体の公式情報でご確認ください。
これは私たちの個人的な体験談であり、法律・不動産の専門的アドバイスではありません。
参考(公式情報)