夫が日本の銀行窓口でFATCAに出会った日
ネット銀行の氏名入力欄、上限14文字でした。
夫のフルネーム——first、middle、last——は27文字。スペースを詰めても26文字。
夫はじっと画面を見つめ、入力し直し、ミドルネームを略してみて、最後はfirstとlastだけにしようとしました。でも全部弾かれます。在留カードに登録されている氏名と完全に一致していないと本人確認が通らないからです。ミドルネーム込みで。
夫はこっちを向いて言いました。「ミドルネームある人、この国でどうやって生きてんの?」
私には答えられませんでした。私たちはノートパソコンを閉じました。
全部読む時間がない人へ(先に結論だけ)
- ネット銀行:ミドルネームがある人、健闘を祈ります。たいてい文字数で詰みます
- メガバンクの実店舗:面倒。でも結局これしか方法がなかった
- FATCA:アメリカ人特有の書類地獄。手続き時間が約2倍。配偶者には複雑な感情が湧きます
- 書類:訂正印を1本持参してください。確実に使います
なぜネット銀行はダメだったか
この記事で一番つまらない、でも一番大事な一文:
日本のネット銀行の申込フォームは、欧米のフルネームの文字数を想定していない。
これだけです。これが全部の理由。悪意があるわけじゃない。差別でもない。ただ2008年ごろのエンジニアが「氏名 最大14文字でいいだろ」と決めて、リリースして、そのまま今に至るというだけです。
ネット銀行は他にも日本の電話番号でSMS認証だったり色々ありますが、最大の壁は名前欄。1行試して、FATCAのセクションに辿り着く前に弾かれました。
(補足:日本のネット銀行は急速に進化しています。文字数制限や外国人対応のポリシーは私たちの体験時から変わっている可能性があります。諦める前に、各銀行の最新情報を直接確認してみてください。)
実店舗へ
というわけで、私たちは古典的な方法を選びました——メガバンクの支店に直接行きました。
タイミングについて2つ:
新しい職場に入ってすぐは行かない方がいい。収入証明を聞かれた時、新品の給与明細だと弱いから。私たちは夫の転職と転職の間(無職期間)に行きました。書面上は最悪の状況なのに、結果的には前職の最新給与明細が「直近の収入」として有効で、それで通りました。
2時間は確保。窓口の方が遅いんじゃありません。FATCAのせいです。
FATCA:その瞬間、私たちは年を取った
「FATCA」という言葉、薄っすら聞いたことはありました。「アモチゼーション」と同じくらいの認識。存在は知っているけど、何をするものかは知らない。
窓口のお姉さんが、書類の束をスッと差し出しました。
「米国籍の方は、FATCAに基づく申告状況の確認をさせていただきます」と、美しい接客日本語で。
夫:「FATCA?何それ?」
お姉さんは丁寧に説明し始めました。夫の表情がゆっくり変わっていきます——困惑 → 認識 → 諦め → どこか遠くの一点に向けられた怒り。
やがて英語で私につぶやきました:
「アメリカ政府、わざわざ日本まで追いかけてきてるの?」
(ある意味、そうです。FATCA、2010年。HIRE Act。)
それから夫は数分間、自国の政府が自分の銀行手続きを実測値で「面倒度2倍」にしていたという事実を消化していました。その目の前で、日本の銀行員さんがピシッとした制服姿で、書類を二言語で両手で渡していた。
これは多分、夫が今まで経験した中で最も「アメリカ移民」っぽい瞬間だと思います。
書類
書類はだいたい日本語で、英語の説明が脚注に少し載っているくらい。間違えます。100%。
間違えた時、ただ消すのはダメ。きれいな2本線を引いて、その横に訂正印を押す。訂正印がなければ印鑑で代用。印鑑もなければ、窓口の方が「特定の方法でのサイン」を実演してくれます。気付かないことになっている小さなため息と一緒に。
夫はおよそ7回これをやりました。3回目で耳が赤くなり、5回目には書類を読むのを諦め、窓口の方とアイコンタクトを取りながらサインだけしていました。礼儀正しさだけで人質状況から脱出しようとしている人のように。
結局、口座開設に必要だったもの
順番に:
- 在留カード。これは絶対に持参。
- 収入証明。退職前の給与明細でOKでした。在職中の方は源泉徴収票か直近1〜2ヶ月の給与明細を。
- FATCA自己申告書。米国SSN(Social Security Number)を、夫が普段書いている字よりはるかに丁寧に書いた。
合計、約2時間15分。待ち時間込み。ほとんどは書類です。
完了の瞬間
お姉さんが口座番号を渡してくれて、ふんわりと「おめでとうございます」と言いました。
夫はその紙を見ました。私を見ました。もう一度紙を見ました。
そして、エベレスト登頂直後みたいな声で言いました:
「俺、銀行口座持ってる」
私たちは銀行を出てラーメンを食べました。その日はもうFATCAの話はしませんでした。
同じ境遇のカップルへ
- 配偶者の名前が長いなら、ネット銀行はスキップ。時間の節約になります
- メガバンクの実店舗へ。組織化されていて、米国籍のお客さんも対応慣れしています
- 時間を確保。「ちょっと寄って」じゃなく「今日は銀行の日」
- 訂正印を1本買っておく。数百円です。買って良かったって思います
- 窓口でFATCAをググらせない。怒りスパイラルは誰の役にも立ちません
P.S. その後分かったのですが、FATCAは「在外米国人税務」という氷山の一角でした。それはまた別の記事で書きます。(今書いてます。少し震えながら)
これは私たちの個人的な体験談です。投資や税務の最終判断は、必ず専門家にご相談ください。